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は、現象再現実験結果と異なり過利間隙水圧の上昇にともなう長周期化が見られない。
過剰間隙水圧の応答は、現象再現実験結果と同様な傾向を示しているが絶対量は小さく最大過剰間隙水圧比も0.3程度以下となっている。水平変位の時刻歴から、水平移動は加振開始後主要動部分の6秒から16秒までの10秒間に残留変位に達している。
4−3 実験精度に関する検討
現象再現実験における函体背後の地表水平加速度記録A9と現地鉛直アレーの地表記録と比較すると、概ね良い相関が見られた4)。従って、今回作成した背後埋立地盤が、現地地盤を比較的良く再現していると判断される。またFig-10に岸壁の現地被災測量結果、本実験結果(CASE6)および今回の実験の再現性確認のために行った同一条件の実験2ケース(CASE2、7)の結果を同時に示す。3実験の変状は同様な結果を示し、かつ現地測量結果と整合するものであった。従って、本実験で作成した模型は現地の状態を再現できたものと考えられ、本研究で採用した相似則の有用性が確認された。

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Fig-10 Deformation of model quay walls (CASE2,6,7)

5.まとめ
現象再現実験から、ケーソン式岸壁の被災原因としてケーソン下部の置換土層の軟化が大きな影響を与えていることが明らかになった。さらにケーソン変状がケーソン法線直角方向でほぼ一様であること、間隙水圧消散時に沈下の進行が見られないことから、置換土層の液状化による影響は小さく、むしろ置換土層の軟化に伴うせん断変形がケーソン変位に大きな影響を与えていると推定される。
設計震度相当の入力地震動に対する応答から、変位も極めて小さく、背後地盤・置換土層ともに過剰間隙水圧の上昇が小さいことが実験から明らかにされた。また、加振中のケーソンはロッキング運動をすることが模型実験の結果より明らかになった。さらに、本実験と現地測量の結果は非常に整合性があるものとなったが、これは、模型の妥当性及び選定した相似則の有用性を示すものであった。
現実再現実験及び設計震度相当加振実験結果から、平成7年兵庫県南部地震による神戸港のケーソン式岸壁の被災原因として、設計時の想定震度をはるかに越える入力地震動が主要因として挙げられる。
謝辞
神戸市開発局にはポートアイランドにおける鉛直アレー地震記録を提供頂いた。また、運輸省第三港湾建設局、同神戸調査設計事務所には資料提供、現地でのまさ土採取等の便宜供与を頂いた。文末ながら記して謝意を表します。
参考文献
1)Hirofumi lnagaki,Susumu lai,Takahiro Sugano,Hiroyuki Yamazaki and Takamasa Inatomi (1996):Perfrmance of Caisson Type Quay Wall at Kobe Port Special Issue on Geotevhnical Aspects of the January 17 1995 Hyogoken-Nambu Eanhquake,Soils and Foundafions,Japanese Geofechnical Society,Special lssue,pp.119-136.
2)SuSumu lai(1989):Similitude for Shaking Table Testson Soil-Structure-Fluid Model in 1g Gravitational Field,Soils and Foundations,Japan Soc.Soil Mech.Found.Eng.,Vol.29,No.1,PP.105〜118.
3)Hirofumi Inagaki,Susumu lai,Takahiro Sugano, Hiroyuki Yamazaki and TakamaSa Inatomi (1996):Performance of Caisson Type Quay Wall at Kobe Port,Special Issue on Geotevhnical Aspects of the January 17 1995 Hyogoken-Nambu Earthquake,Soils and Foundations,Japanese Geotechnical Society,Special Issue,p.132
4)港湾施設被害検討委員会編(1995):兵庫県南部地震による港湾施設の被害考察、港研資料、No.813、p.239.

 

 

 

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